撮影マニアックス

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簡単!雷撮影テクニック

「お座敷ストームチェイサー」のSTARFLEETです。嵐や雷を追いかける人をストームチェイサーって呼ぶらしいのですが、カッコいいですよね。私もなりたいのですが、自前の足は自転車だけ。とても撮影や観測機材を背負って雷を追いかけての撮影など夢のまた夢… せいぜいできるのは、西南向きの自宅ベランダと北向の非常階段の間、わずか十数メートルを移動し接近してきた雷雲を待ち構えて写すことくらい。
ということで、ストームチェイサーになりたいけどなれない微妙な心境も含めて「お座敷ストームチェイサー」と名乗っています(笑)
さて閑話休題…

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いよいよ雷シーズン到来だ。危険な落雷だけでなく、パソコンやサーバの大敵「瞬断」を引き起こすなど迷惑な自然現象だが、写真に撮るとなかなかキレイだ。数年前から雷撮影に挑戦しているが、いろいろノウハウも溜まってきたのでメモ代わりにまとめてみた。もちろん、撮影にはいろいろな方法があり、ここで紹介しているものはそのうちの一つということで、皆さんが撮影する際に多少なりとも参考になれば幸いだ。


Canon EOS 5D MarkIIおよびCanon EF24-105mm F4L IS USM
シャッター速度8秒 F5.6 焦点距離24mm ISO50 トリミング済



Canon EOS 5D MarkIIおよびCanon EF24-105mm F4L IS USM
シャッター速度8秒 F5.6 焦点距離24mm ISO50

ここではデジタル一眼レフカメラデジイチ、DSLRとも)での撮影方法を紹介する。コンパクトデジタルカメラ(コンデジ)でも長時間露光が可能な機種なら撮影可能だ。なお、長時間露光の方法は各機種のマニュアルを読んで頂きたい。

なお、雷は自然現象なのでどこで光るか誰にもわからない。つまり狙って良いショットを撮るのはかなり難しい。だからこそ撮れたときにうれしさや喜びはひとしおのものがあるわけだ。
ということで下記は機材と撮り方。わからないことなどあれば気軽にご質問を。

◎必要な機材は?

◆三脚
三脚はベルボンやマンフロット、ジッツオ等のカーボン三段三脚がおすすめだが、結構いい値段がする。多少重くなるがアルミ三脚を選ぶなら下記のような値引き製品をとりあえず入手し、撮影に慣れてきたら改めて参考書などを見てベストな製品を選ぶ、というのもお勧め(私がそうでした)。
さて長時間露光用の三脚選びのポイントは頑丈で風や震動に強いこと。軽量三脚はトップヘビーになりがちで、震動に弱く、下手をすると転倒する可能性もある。この場合、ウエイトフック(下のリンク真ん中)を使いおもり(カバンやペットボトル)をぶら下げるてカメラと三脚全体の重量を増やし、加えてトップヘビー状態を解消し耐震性も向上する。

三脚選びなど周辺機材について知識を得たい人には学研のムック「撮影アクセサリー 使い方と選び方」が詳しい。

コンパクトデジタルカメラやオリンパスペンなど軽量なデジタル一眼など重量500g以内ならカメラスタビライザーもオススメだ。窓辺で撮影する際、角度決めとカメラの固定が格段に便利になる。折りたたむと薄型になるので鞄に入れっぱなしでも苦にならないのがイイ。

 三脚撮影の場合、手ブレ補正機能はオフにすること。機種によってはオンだとかえってブレが写り込むことがあるのでご注意を。

◆広角レンズ
近隣で発生した雷の場合は、どこで光るか判らないので広角レンズを広角側(広角端やワイド端とも。例:24-105mmという焦点距離のレンズなら広角24mm側という意味)で使うのがベスト焦点距離16mmなどのレンズがあればいいが24mmクラスでも充分写せる。メーカー純正、サードパーティ製など多数販売されている。筆者の知人は夜景撮影用にトキナーの対角線魚眼レンズを入手していたが、このようなレンズも画角が広く、近隣で発生している雷の撮影に向いている。

広角レンズが無い場合は、一番広角性能の高いレンズの広角側で撮影するとよい。なお、冒頭の作例2枚目は落雷が遠方でほぼ同一地域で発生していたので、その地域を狙ってレンズ望遠側で拡大し撮影したもの。落雷発生地域が遠い場合は望遠レンズで狙うのもアリだ。

なお、レンズ選びの参考にカカクコムなどの口コミサイトを活用するのも手だし、プロカメラマンの視点でまとめられた作例と解説付きのムックや書籍も情報が分かりやすくていい。レンズは高いので雷撮影だけで買う人は少ないだろう。西平先生の「交換レンズ 2009」は各メーカー用レンズ(純正からサードパーティ製品まで)の作例やコメントが掲載されているし、田中先生の「デジタル一眼 交換レンズ入門」はレンズの基礎知識から各レンズで得られる効果などを作例付きでわかりやすく解説している。


Canon EOS 5D MarkIIおよびCanon EF24-105mm F4L IS USM
シャッター速度13秒 F7.1 焦点距離24mm ISO100 トリミング済
雷が10km以上離れた地点に同時に落ちた瞬間。まだ遠いな、と思って油断していると危ない、ということが判る。



Canon EOS 5D MarkIIおよびCanon EF24-105mm F4L IS USM
シャッター速度13秒 F6.3 焦点距離102mm ISO100
映画のワンシーンのような幻想的な落雷。昔の人が雷に神秘性、神性を感じた理由が分かるような気がする。


<<遠距離の雷なら望遠レンズで撮影>>
近傍で発生した雷なら広角レンズとなるが、数十キロ離れた遠距離で発生した雷の撮影には望遠レンズを使う。撮影ポイントから距離30〜40kmくらいの地上雷なら焦点距離300〜400mm程度の焦点距離が適切だろう。雲間雷の場合、意外と稲妻の飛ぶ距離が大きい場合があり、広角から標準レンズも用意しておくと良いだろう。


Canon EOS 7DおよびCanon EF L100-400mm F4.5-5.6L IS USM シャッター速度8秒 F7.1 焦点距離35mm換算160mm ISO100 トリミング済
フォトレタッチCapture NX 2使用
作例は新宿副都心越しに発生した落雷を撮影したもので、ホワイトバランスはオートで撮影しRAW現像時に白色蛍光灯に変更している。
なお、望遠レンズでの撮影では広角レンズの場合より一層振動に注意する必要がある。しっかりした足下、頑丈な三脚とリモートスイッチの使用は必須だ。



NDフィルター
NDフィルターはカメラに入る光を大幅に減らすためのフィルター。下のリンク先を見てもらえば分かるが色のついたガラス板でできていて、この濃度でレンズに入射する光の量を調節するもの。雷撮影では長時間露光の際に露出オーバーになる場合や絞りの値を大きくして意図しないレンズや撮像素子のゴミなどの写り込みを防ぐため使用。夜間撮影ではなくても大丈夫なことが多い。画像は夕方でやや明るかったのでND8フィルターで減光して撮影。


Canon EOS 5D MarkIIおよびCanon EF24-105mm F4L IS USM
シャッター速度8秒 F16 焦点距離100mm ISO50 ND8フィルター使用 トリミング済
落雷発生地域が撮影地より遠方だったので、レンズの望遠側(望遠端やテレ端とも)で撮影。雷がやや赤みがかっているのは遠方のためと思われる。


大事なことだがレンズによってフィルター径が異なるので購入の際はご確認を。

なお、さきほど紹介した学研のムック「撮影アクセサリー 使い方と選び方」にNDフィルターの活用例が多数紹介されている。

◆レリーズ
撮影時、シャッターボタンを押した際の震動やカメラの向きが不用意に変わることを防ぐ。タイマー撮影が可能な製品もあり、無人撮影も可能。レリーズには安価なサードパーティ製品もある。予算と方針に応じて選びたい。下記はキヤノン用のサードパーティ製品。タイマーは付いていないが、レリーズボタンのロック機能があり長時間連写撮影できていい(純正の半額以下だし)。なお、レリーズも機種別に購入する必要があるので必ずご確認を。

◆その他

 先日、都庁に夜景を撮りに行ったら「忍者レフ」を使っている方がいた。ユニークな形状で、一度借りて使ったが充分実用的だ。これがあればビル屋内展望台で天井照明が煌々とついている場所でも長時間露光が可能になる。

その他、あると便利なのがiPhoneやアンドロイドなどスマートフォン、ノートパソコンとかiPadなど。Webの雷雲情報提供サービスを利用すれば雷雲の情報が簡単に手に入る。


東京電力の雷雲・落雷合成情報。雷の移動と発生をきめ細かく知るにはおすすめ。

※雷雲情報提供サイト一覧
気象庁 | レーダー・ナウキャスト(降水・雷・竜巻)
全国の落雷情報 - Yahoo!天気情報
東北電力 落雷情報
東京電力 雷雲・落雷合成情報
北陸電力 気象情報
中部電力 雷情報
関西電力 落雷位置情報
九州電力 雷情報インターネット


◎撮影方法は?


雷撮影中のワンシーン。撮影は安全確保が第一だ。

まず撮影の前に安全確保が重要。一番いいのは建物内から撮影することだ。室内を消灯して暗くし、窓ガラスの照明の反射を減らして撮影するのがベター。とにかく吹きっさらしのグラウンドや屋上で撮影するのは危険なので絶対止めて頂きたい。以下は室内、あるいはベランダなど屋根があって雨に濡れない場所で撮影していること前提で書いている。お子さんが自由研究などで雷撮影をする場合は、大人がきちんと安全確認を。

(1)雷雲の状況確認とカメラの三脚への取り付け
目視あるいはスマートフォンで雷雲の方向を確認し、カメラを三脚に固定する。最近のカメラは水準器を内蔵している機種があるので、その場合は利用して画面左右方向を水平に保つ。画像の水平がきちんと出ているとプロっぽくてイイ(笑)。非内蔵機種ならストロボシューに取り付けるタイプを利用すると便利。デジタル製品もあるが、従来からの気泡式なら電池いらずでよい。



(2)カメラのセッティング
レンズのフォーカスはマニュアルで無限遠にしピントを固定、手ぶれ補正がある機種ならオフにする。NDフィルターはこのタイミングで装着、装着する場合はプロテクトフィルターを取り外すこと。なお、NDフィルターを取り付けるとファインダーでピントが合わせにくくなるので、ピントを合わせてから取り付けるのがいいだろう。その後、試写画像でピントが合っているか確認すればOKだ。カメラのISO感度は設定可能な下限にし、絞りは開放からF8くらいにする。露光時間は数分の1秒から20秒くらい。適切な露光時間は周囲の明るさやNDフィルターの有無で変わるので、事前に何パターンか露光時間を変えて試写をし、撮影状況にあった適切な露光時間を割り出す。画質設定は最高にしておくと、あとでトリミングした際の画質低下の影響を最低限にできる。RAWで撮影すれば多少の露光時間のミスなら現像時に調整できることもある。

(3)撮影
後はひたすらレリーズのシャッターボタンを押し続ける。ロック機能付きのレリーズなら放置したままでどんどん撮影してくれる。数百枚に1枚くらいは大迫力写真が撮れるかも。レリーズのタイマー撮影機能を利用し安全な室内で待つのもあり。
出先などでレリーズがない場合や非対応機種の場合はセルフタイマーを使う。
なお、数百枚も撮るならメモリーカードは余裕のある容量を用意したい。最近は大容量化と低価格が著しいので、8GBから16GBくらいのものを複数枚買っておくと後々便利。万が一データが壊れてもデータを分けておけば全滅は免れる。


◎おまけ;RAWで撮る

RAWで撮っておくと露出やホワイトバランスの補正で遊べる。下記は記事冒頭の落雷写真のホワイトバランスを現像時に「白色蛍光灯」へ変更したもの。