撮影マニアックス

天体写真や雷写真がメインのブログ

誰でもできる比較明コンポジットを使ったかんたん流星撮影

「お座敷星景写真家」ことSTARFLEETです。検索で飛んでくる人が多いのでウチでやっている流星撮影/星景撮影の方法をメモ的にまとめてみましたのでご参考まで。記事を書いたのが冬なので寒さ対策メインですが、基本的にはオールシーズンで使えるワザかと。多少なりとも読んだ方のお役に立てれば幸いです。

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ふたご座流星群など冬の流星観測は寒さが観測の大敵。でも撮りたいって人には、カメラを放置しても写せるこの超手抜き撮影術をおすすめしたい。使用するのはカメラと三脚、そして比較明コンポジットソフト。


比較明コンポジットとは?

日周運動を天体写真で写す場合、以前は長時間シャッターを開放して撮影するのが一般的だった。ただし、この方法では画像にデジカメの場合はノイズが乗る、光害の多い場所では長時間露光に伴いバックグラウンドが明るくなるなど弊害が見られた。そこで短時間露光画像を複数枚合成することであたかも長時間露光と同じような効果を得ようとするのが比較明コンポジット(合成)という手法だ。短時間露光なので、露出時間が短いのでノイズ発生を少なくできること、天体と地上の風景は光量が異なり単純に撮影するといずれかが白飛びしがちだがそれを防げることなどのメリットがある。かつてはPhotoshopなど高価なソフトじゃないと作成できなかったけど、最近はいいフリーソフトが多数登場しているので手軽に作れるのがありがたい。作者の方々にはこの場を借りて謝意を表したい。


比較明コンポジットで撮影した画像。左はロシアの人工衛星、右は夏、夜間登山たけなわの富士に沈む月。


用意する機材

(1)デジタル一眼レフ
デジタル一眼レフはここ2〜3年以内の機種なら大抵大丈夫かと思う。最新のD7000とか60Dクラスならバッチシ撮れるハズ。要はレリーズが使えてバッテリーの持ちが良い機種ならなんでもいい。コンデジでもシャッター速度マニュアルで連写できる機種ならOK。

(2)広角レンズ
流星はどこを飛ぶか分からないので、広角レンズでできるだけ広い範囲を写し取るようにすると画角内に流星が収まる可能性が高くできるかと。なお、開放F値が明るいレンズがおすすめ。ただ、広角レンズだと流星は小さく写りがちなので、ややバクチになるけど流星を大きめに写したい場合は35mm換算50mmの標準レンズなどで狙うのもありだ。
ちなみに魚眼レンズではトキナー、あるいはシグマの評価が高い。ウチはより廉価なウクライナレンズを使っているけどハレーションがキツイので、できれば国産品が欲しいと思っている。

(3)レリーズ(リモートスイッチ)
リモコン式ではなくケーブル式で、値段は数千円くらい。一回買えばほぼ一生モノ、花火撮影などにも使えるので揃えておいて損はない。

(4)三脚
がっしりした頑丈なものがベスト。ウチは旅先へ持って行くことを考えてジッツオの軽量で頑丈なトラベラーを使用中。重さ2kgちょいなのでカメラ込みバッグ一つで移動できる優れモノだ。高くてもアマチュアレベルの使用頻度では大事に使えばほぼ一生モノと思っている。

(5)バッテリー
何百枚も連写することになるので必ずフル充電を。バッテリーグリップがあればバッテリー2個併用で動作時間を延ばせる。電源が取れる場所ならACアダプタを利用するのもアリ。

(6)大容量メモリ
16GBとか32GBがあれば心置きなく撮影可能。最低16GBは欲しい。

(7)その他
星座早見ソフトが動くスマートフォンネットブック赤色光になる懐中電灯夜露防止用のカイロ暖かいお茶発熱系股引や手袋など防寒具

例えばiPod touchを持っているなら、星座早見ソフトとしてアストロアーツiアプリ「iステラ」がおすすめだ。流星群の放射点をiステラ上で表示する機能があるので、どこを見ればいいかが一目で分かる。
赤色灯をもつ懐中電灯はカメラのダイヤルやピントの確認には必須。カイロは使い捨てカイロを輪ゴムでレンズに止めて暖めると結露を防げる。
水筒は中に熱いコーヒーやお茶を入れて時々呑むと体が冷えずに済む。紹介しているワンタッチ系は取り扱いしやすいのおすすめ。ヒートテックなどは知らず知らずに下半身が冷えるのを防ぐ。冬期の観測は、未明から明け方はホント冷えるから必需品。


撮影場所

視界が開けていて空がなるべく暗めの場所がベスト。比較明合成を使う場合、それほど長時間露光する訳ではないのであまり神経質にならなくてもいいと思う。ただし、構図の中に街灯やスポーツ施設、ネオンサインなどの強力な光源が入るとゴーストが出てしまうので、極力入れないようにしたい。自宅以外、公園や河原で撮る場合はその場所の治安も考慮すること。手抜き撮影ということで私は毎回自宅ベランダから。


撮影方法

1.三脚をがっしりとした地面に設置する。軟弱な地盤は撮影中に三脚が動いたり風の影響を受けたりするので不可。また、伸縮式三脚の場合、足をきっちり必要段数だけ伸ばして微動だにしないようにすること。

2.カメラを三脚に固定し、写したい方角に向ける。流星群の場合、「ふたご座」「ペルセウス座」流星群の場合は、星座名が流星群の放射点になるので、オリオン座やはくちょう座など流星群の放射点からやや離れた星座にカメラを向けると良い。「しぶんぎ座」の場合は、おおぐま座(北斗七星周辺)、うしかい座などにカメラを向けると良いだろう。星座の位置は星座早見ソフトで確認する。

3.レリーズを取り付ける。カイロも輪ゴムなどでレンズに取り付ける。小さめのタオルなどで覆い、直接カイロが風で冷えないようにすると万全。

4.レンズをマニュアルフォーカスで無限遠に設定する。絞りは開放、あるいは一段絞りくらいで。

5.ISO感度、露光時間を決める。空の明るさなどの条件で設定値は変わってくるが、下記の写真はF4でISO感度250、10秒露出で写している。この画像はできるだけ連写枚数を稼ぐため、RAWは使わずJPEGのLを使用している。撮影モードは連写モードで。

5.レリーズでシャッターボタンを押し、まずは1枚試し撮りして露光時間やピントなどがちゃんとあっているか確認する。問題なければレリーズロックでそのまま連写しまくる。後は放置して室内で熱い茶を飲むなり、その場でじっくり空を眺めるなりして待つ。北極星を中心に写すなら1〜3時間くらい撮影すると日周運動がわかって絵的にいい。


画像処理

1.まず比較明合成ソフトを用意、私はまさのぶさんの作のLightenCompositeを利用させて貰っている(感謝)。

2.LightenCompositeを起動する。合成元のフォルダと合成後の画像の保存先を指定する。もちろん合成元のフォルダには、必要な枚数だけの元画像を放り込んでおく。

3.「実行」ボタンを押すと作業開始、プログレスバーが右に伸びていくので暫く待つ。このとき、枚数にもよるが一瞬で作業が終了するような場合はファイルの読み込みなどに失敗している可能性があるので調べる。

4.「完了」というメッセージが出たら終了。保存先として指定したフォルダに画像ができているはず。

これで下記のような画像が生成されているハズだ。


北天方向を10秒露出で撮影した画像を約1時間40分ぶん合成した画像。画像左側に流星が写っている。2010年12月15日撮影。


上の画像を拡大した画像で、二等級クラスのふたご座流星群が写っている。他にも多数流星が出現していたが、空が明るくて写っていない、あるいは画角の外を流れたなどでその多くを写せなかったことが残念だった。

ちなみに撮影当日は夜半に急に濃い霧が出現、カメラやレンズが夜露でびっしょりと濡れてしまった。もちろんレンズが曇って写したモノはすべてボケボケにorz カイロを切らしていたこともあったが、ちょっとの油断で大失敗だった…